茨城県自治体問題研究所
多崎貞夫 加藤正敏(エコフロンティアかさまを監視する市民の会)
「エコフロンティアかさま」は、2005年に「茨城県環境保全事業団」により開設された、県の指導監督下にある「公共処分場」である。産業廃棄物処分場であるが、旧笠間市の一般廃棄物を週1回受入れ、他市町村清掃センターからの燃え殻ごみも受入れている。近年は福島原発事故由来の膨大な量の放射性廃棄物の搬入が続けられている。
・所在地 茨城県笠間市福田165
・最終処分場 用地面積28.6ha 埋立容量 240万㎥
・溶融処理施設72.5t/日×2炉
「エコフロンティアかさま」は管理型最終処分場で、営業開始時より放射性廃棄物は受け入れないとしていた。しかし2011年の福島原発事故後、特別措置法により放射性廃棄物も8,000べクレル/kg以下であれば、管理型処分場に埋め立ててよいとされている。
2015年1月現在、放射性セシウムを帯びたばいじん(飛灰)や燃えがら(主灰)などの埋立て量は、71,756トン、放射性セシウムの総量は約1100億ベクレルと推定された。現在は、1,500億べクレル超と推定される。
「エコフロンティアかさま」では、放射性廃棄物を処分場の一角(約1,000㎡)に埋立て、それを毎日農業用シートで覆い、その上に数十センチ覆土していた。2016年4月にはこのエリアに厚い防水シートを覆い覆土している。
管理型処分場に、このような簡便な埋立て方法で放射性廃棄物を埋立てることは極めて無謀であり、本会では、「放射性廃棄物は分厚い隔壁を持つ遮断型の処分場で処理すべきである」と主張している。
放射性セシウム137の半減期は30年、ほぼ消滅には300年かかるが、管理型処分場の遮水シートの寿命はよくもつて15年といわれる。「エコフロンティアかさま」の遮水工の寿命はあと数年。劣化していく遮水工から汚染水がいずれ漏れ出すことは必然である。
放射性セシウムが遮水シートから漏れだし、地下水を汚染していくと、やがて涸沼川(ひぬまがわ)や涸沼(ひぬま)を汚染していく。その間、田畑も汚染していく。こうして涸沼川や涸沼の沼川魚介類が汚染され、食物連鎖で被害は広く長くなることが懸念される。
・貯留構造物 堤高15m
・法面勾配 場内側1:2.0 場外側1:0.8
処分場計画断面図を見ると、埋立て完了時には堰堤から奥側に向けた勾配が10度になっおり、建設工事前の住民への説明では、この上に盛土をして植林するとしていた。しかし、この10度という傾斜については、安全上大きな問題がある。
埋立て処分場の周辺、東側や南北は山地であり、異常降雨があった場合、山の表層を流れおちる多量の地下水流を考えれば、堰堤はその事態に耐えられる構造であるとは考えにくい。事業団もそれを懸念してか、一昨年から場内下手に高さ3mほどの仮堰堤を築いた。しかしこの仮堰堤はスラグや土を重機で転圧しただけのもので、異常降雨にどれだけ耐えられるのか大きな疑問がある。
開設時、埋立期間は10年であったが、10年後の今日も埋立容量は5割弱である。ごみ不足が続いている。2016年3月の「第15回環境保全委員会」では、懸念される問題がいくつか取り上げられた。
埋設される廃棄物の量は年々大きくなり、シートがその重量に十分耐えられるか、どうすればその破損が探知できるのか。シートの伸びは許容範囲内にあるということだが、それなりに伸びてきている。検知器の電極でわかるといっているが、小さな穴が開いているのを見つけるのはむつかしいのではないか。
2011年の東北大地震で、最終処分場の地盤沈下は最大で約27センチである。そして今後、埋立て処分場の上載荷重が大きくなればなるほど不等沈下が予測される。局所的に沈下が大きければ、掘出して検査する必要があるが、現状ではまだ大丈夫か。地盤沈下が大きいところに埋める場合は軽いものをもっていくという方策が考えられないか。
2013年以降、地下水中の塩化物イオンが大きく上昇している。その原因が何か議論になり、シート破損の可能性を指摘する委員も出ている。
笠間市主催で毎月1回開催。委員15名は、地元福田地区から10名(5地区の区長と対策 協議会役員5名)、隣接地区から3名、市から2名。しかし、質問も意見もほとんど出ない会 議である。
事業団主催で毎年度3月開催。委員は、学識経験者14名、市民8名、行政2名。意見を出す委員は例年3〜4名で審議は低調であるが、2016年3月は、上記のとおり、地盤沈下などの問題で珍しく発言が多く出た。しかし、福島原発経由の放射性廃棄物の持ち込みと埋立問題については、かつて1人の委員からどのような埋立方法をしているのかという発言はあったが、この4年間はそれが漏れ出す危険性などについての質疑は一切なく、処分場最大の問題から目をそらし逃げているとしか考えられない。