3月13日、新型コロナウイルス感染症を対象に加えた改定新型インフルエンザ等対策特別措置法(以下、改定特措法)が成立しました。しかしこの改定特措法は、国民生活に重大な制限を加えるとともに、首相の判断でできる緊急事態宣言の発動要件がきわめてあいまいな内容になっており、決して見逃すことはできません。
改定特措法は、緊急事態宣言によって「外出の自粛」、「学校・社会福祉施設、興行場等に対する使用などの制限・停止」、「土地所有者の同意なしの臨時医療機関開設のための土地使用」などの強い私権制限が行えるとしていますが、これは憲法で保障された基本的人権及び地方自治と相いれない内容を含んでいます。加えて、その制限の範囲・期限についても、極めてあいまいです。しかも首相が緊急事態宣言をいつ、どのような場合に発動するのかについても、「重篤である症例」「全国的かつ急速な蔓延」といった抽象的な文言を羅列しているだけです。さらに首相は、この宣言を医療関係者などの専門家の意見を聞くことなく出すことができるとしています。
以上の内容から、改定特措法が私たちの暮らしに大きな制約を課すものであること、しかもその発動の判断がほとんど一元的に首相にゆだねられている点で、恣意的で、地方自治をも無視した内容であることは看過できません。以上から、私たちは、改定特措法に強く抗議するものです。
今、緊急に求められているのは、何よりも、憲法の理念に基づいて、国が責任をもって国民の命と健康、安全と安心を確保する施策・予算を速やかに実行・充実することです。とりわけ、憲法25条に基づいて、保健所の調査・検査体制強化など地方自治体の公衆衛生機能を高めるとともに、地域病院の再編統合策を直ちに中止し、感染症等にも機敏に対応できる公的医療体制・設備を構築するために、職員の増員及び財源の保障が必要です。
併せて、「コロナショック」によって急速に疲弊しつつある住民の暮らし、中小企業経営や地域経済を維持、再生していくために、減税、休職・休業補償、経営・雇用継続のための助成金・金融制度などの緊急対策を、誰もが利用しやすい仕組みで迅速に具体化することも必要です。
その際、国は、科学的根拠もない、場当り的な「政治判断」で国民や住民を混乱させるのではなく、エビデンスに基づく徹底した情報提供を行い、地方自治を重んじる立場から、住民の「いのちと暮らし」を守るべき地方自治体が、住民とともに地域の実情にあった自主的施策を策定・実施できるように、全面的にバックアップすることを強く求めます。
2020年03月22日
自治体問題研究所理事会
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