【論文】港湾の兵站基地化を許さない

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名古屋港の概況

名古屋港の開港は1907年(明治40年)、横浜港や神戸港に遅れること40、50年、国内34番目に開港しました。その後の発展で、現在では4市1村(名古屋市・東海市・知多市・弥富市・飛島村)にまたがる日本最大の臨港地区(陸域、4216万平方メートル)と、港湾区域(水域、8184万平方メートル)を誇り、背後産業の国際競争力を支えながら、コンテナ貨物のみならずバルク貨物、完成自動車をバランスよく取り扱う、世界約160の国・地域と結ばれる国際総合港湾としての地位を確立しています。

港湾管理者は、愛知県と名古屋市を設立母体とする一部事務組合、名古屋港管理組合です。臨港地区内に港湾施設を設置することはもちろんのこと、港湾関係者に低額で土地の貸付等を行い港湾物流の成長に資するほか、税金のみに頼らない港湾経営を実施し、名古屋港の発展に寄与しています。

港湾法

港湾の管理・運営を行う港湾管理者は、港湾法に規定されています。戦前から港湾法制定を求める動きはありましたが、戦争の足音が進む中で、港湾を国が管理し、軍事拠点としていました。戦後に、戦争の反省を踏まえた日本国憲法が制定され、その後の1950年に成立した港湾法も戦争時の国による直轄管理で、兵站へいたん基地化した反省を踏まえ、港湾管理者は地方自治体が担うように規定されました。憲法で地方自治が規定されたことと密接に関係しています。

特定利用空港・港湾

政府は、先の安保3文書に基づき、自衛隊や海上保安庁が平時から使用できる【特定利用空港・港湾】を指定することを決定し、2024年4月に全国11の港湾(石垣港・博多港・高知港・須崎港・宿毛湾港・高松港・室蘭港・釧路港・留萌港・苫小牧港・石狩湾新港)を指定し、8月にはさらに9の港湾(鹿児島港・志布志港・川内港・西之表港・名瀬港・和泊港・熊本港・八代港・敦賀港)を指定しました。指定された港湾は、北海道・四国・九州・沖縄の各港湾が中心で、有事の際は、国が優先して使用できるようにするものです。今年6月に改正された地方自治法の「国の指示権拡大」とリンクし、憲法改悪の先取りとも言えます。

港湾の産別労働組合としての動き

名古屋港管理組合職員労働組合も加盟する、港湾の産別労働組合である全国港湾労働組合連合会(全国港湾)は、2023年9月21日の全国港湾第16回定期大会において、ロシアのウクライナ侵攻を受けて「港湾を兵站基地にするな! 憲法改悪・軍事費と軍備増強に反対する」特別決議を挙げていました。そのような中で、国の【特定利用空港・港湾】の動きを受けて、昨年末に業界団体である日本港運協会(12月19日)と国土交通省港湾局(12月21日)に、港湾の「軍事拠点化・兵站基地化」に関する申し入れを行いました。港湾労使は、23春闘の交渉において「平和を希求する思いは業界側も同感であり…港湾労働者の安全・安心の確保は労使共通の願い」とし、平和への思いを共通としていました。

日本港運協会に対しては、港湾運送事業を平和産業として維持発展させる立場から「港湾の軍事拠点化・兵站基地化」に反対の姿勢を明確にするよう求め、国土交通省に対しては、港湾運送事業の平和的存立・発展を担保するため、商港の軍事基地化を図らないよう関係機関に働きかけることを求めました。

全国港湾として【特定利用空港・港湾】の指定は、港湾労働者の職場である港湾の「軍事拠点化・兵站基地化」に直結するもので、港湾労働者の安全・安心の担保を使命とする港湾労働組合として絶対に容認できないとし、政府が集団的自衛権を容認し「敵基地攻撃能力を保有する」とする中で、港湾が軍事基地化されれば、港湾と港湾労働者は攻撃の標的とされることは間違いないと表明しています。

全国の港湾管理者で労働組合を組織している地方自治体は多くはありませんが、港湾で働く労働者とともに、港湾管理者にも有事の際のリスクが高まります。港湾管理者である自治体労働組合として、同じ港湾で働く民間の港湾労働者と連帯し、港湾の「軍事拠点化・兵站基地化」に反対する運動を進めていきます。

港湾管理者の労働組合としての基本スタンス

【特定利用空港・港湾】は、北海道・日本海側・四国・九州・沖縄の各港湾が指定されています。名古屋港をはじめ、東京・横浜・大阪・神戸などの大規模港湾が指定されておらず、問題が表面化していない実態もあります。このような状況だからこそ、港湾産別の労働組合である全国港湾と連携し、指定反対の意思を示す必要があります。

港は、背後住民の生活を支える、エネルギーの原材料なども輸入しており、ウクライナのような紛争が起こった場合、真っ先に攻撃の対象になる可能性が高い場所です。実際、ロシアのウクライナ侵攻では、ウクライナの港が初期段階で攻撃を受けました。その意味でも、平和を求めて引き続き運動を進めていきます。

港湾は、背後住民の生命・財産を守る防災機能の強化が必要です。同時に、国の悪政から住民を守る「防波堤」の役割も発揮していくことが求められており、労働組合としての役割と考えています。

高木 強

1991年、名古屋港管理組合に就職。名古屋港管理組合職員労働組合青年部役員を経て、1998年より同組合の書記長・委員長を歴任し、2023年7月より、自治労連愛知県本部の書記長に就任、現在に至る。

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