水道の民営化・広域化を考える

    書籍名 水道の民営化・広域化を考える
    著者名等 尾林 芳匡, 渡辺 卓也 (編著)
    価格 ¥1,870(税込)
    発行年月日: 2018年7月20日
    ISBN-10 4880376809
    ISBN-13 9784880376806
    C-CODE C0036
    ページ数 180ページ
    本のサイズ A5

書籍の内容

いのちの水をどう守るのか

押し寄せる老朽化、料金6割上昇、人口減に維持困難……、これらは水道について語られる言説だ。国は、水道法改正を視野に置いて、この危機を乗り越えようとしている。一つは、地方公共団体が水道事業者のまま、運営を民間事業者に設定すること。二つめは、基盤強化のための基本方針を定め、都道府県が関係市町村の同意を得て強化計画を策定し、広域化を図り、スケールメリットを得ること。つまり、民営化と広域化だ。はたして、この方向を導き出した分析は正しいのか。すでに、各地で起こっている「水」めぐる民営化と広域化の動きを検証して、「いのちの水」をどう守っていくか多角的に考える。

目次

プロローグ●水をめぐるウソ・ホント

  • 1 給水量が減り料金収入激減、投資ができず老朽化が加速!
  • 2 水道の普及率と投資額の推移
  • 3 管路の老朽化の現状と課題
  • 4 水道基幹管路の耐震適合率
  • 5 水道広域化が進んでいない
  • 6 市町村による水道料金差が大きい
  • 7 水道事業体における職員の高齢化と減少はなぜ
  • 8 水道現場における経験ある職員が必要なワケ
  • 9 民間に委託したことで経費が削減できたのでしょうか?

解説●2018年水道法改正とは

  • 1 2018年水道法改正の内容
  • 2 水道法一部改正の問題点
  • 3 いま地方自治体で必要なこと

Ⅰ 水をめぐる広域化と民営化の現場

イントロダクション●各地で具体化する広域化・民営化の動き

  • 1 自己水源放棄・広域化の流れ
  • 2 唐突な提案・結論ありきの姿勢
  • 3 過去の過剰投資には「ほおかむり」
  • 4 コンセッションは「経営基盤強化で経営改善」のはずが……
  • 5 水道だけではない、コンセッションの拡大
  • 6 水道民営化に対する根強い不安、議会や住民による反発
  • 7 今後の闘いの糧として

1 香川県●県主導の水道広域化の矛盾

  • 1 香川県の水事情と広域化計画
  • 2 自己水源廃止の矛盾
  • 3 市町の自治ないがしろの広域化推進
  • 4 不参加自治体にはペナルティ
  • 5 住民が関与できない水道にさせない

2 宮城県●水道事業へのコンセッション導入の問題点

  • 1 宮城県のコンセッション導入構想
  • 2 宮城県の水道事業と課題
  • 3 「企業の利益を損なう」として業者選定過程が「非開示」に
  • 4 みやぎ型管理運営方式の問題点
  • 5 県民の理解を深めるために

3 浜松市●下水道処理場のコンセッション化問題

  • 1 浜松市の概要
  • 2 浜松市下水道事業と静岡県西遠流域下水道
  • 3 西遠浄化センター、コンセッション化の経緯
  • 4 コンセッション化ここが問題――2017年5月議会での反対討論
  • 5 国の目論見への対抗

4 京都府●簡易水道と上水道の統合

  • 1 簡易水道事業とは
  • 2 簡易水道事業の現状と統合への経緯
  • 3 福知山市での統合事例
  • 4 簡易水道事業の抱える問題点

5 奈良県●奈良市中山間地域の上下水道のコンセッション計画 

  • 1 市町村合併後の奈良市の上下水道
  • 2 上下水道コンセッション計画の概要
  • 3 民営化の背景にあるもの
  • 4 住民の声を背景に議会で民営化条例案を否決

6 埼玉県●秩父郡小鹿野町民の水源・浄水場を守る運動

  • 1 秩父郡市の河川と水源
  • 2 水道事業の統合の経過――住民不在で進められた広域化計画
  • 3 広域化準備室の主張するメリットと無理な配水計画
  • 4 小鹿野町であがった住民の批判
  • 5 水源・浄水場を守る住民の運動
  • 6 秩父地域水道事業の統合――秩父広域市町村圏組合の事務に
  • 7 明らかになった広域統合の問題
  • 8 今後の運動

7 大阪市●市民が止めた水道民営化

  • 1 ちょっと待って! 水道の民営化
  • 2 大阪市水道民営化の前哨戦!府営水道・市営水道の統合
  • 3 「二重行政」の解消の野望がとん挫、民営化計画へ
  • 4 広がる共同と民営化ノーの声

8 滋賀県●大津市のガス事業コンセッション

  • 1 現在まで大津市ガスがどう運営されてきたか
  • 2 今回の民営化の背景――電力・ガス小売の自由化・市全体の行革
  • 3 「あり方検討委員会」が答申した民営化(コンセッション)のポイント
  • 4 議会や市民の運動で明らかになった問題点

Ⅱ 水をめぐる広域化・民営化の論点

1 上水道インフラの更新における広域性と効率性

  • 1 「朽ちる水道インフラ」は本当か
  • 2 水道インフラの広域化・民営化をめぐる論点
  • 3 水道事業の広域化と効率化
  • 4 水道事業の民間活用の目的と実際
  • 5 水道インフラの更新計画のために

2 水道の民営化・広域化を考える

  • 1 水道とは
  • 2 水道事業は地方公営企業
  • 3 PFI法・コンセッション(公共施設等運営権)と水道
  • 4 水道の民営化・広域化を進めようとする動き
  • 5 公共施設等運営権実施契約書の実際
  • 6 水道と広域化・民間化の問題点
  • 7 世界で進む水ビジネスと再公営化
  • 8 いのちの水を守るために
  • おわりに