デジタル化と地方自治 自治体DXと「新しい資本主義」の虚妄

    書籍名 デジタル化と地方自治 自治体DXと「新しい資本主義」の虚妄
    著者名等 岡田 知弘, 中山 徹, 本多 滝夫, 平岡 和久 (著)
    価格 ¥1,870(税込)
    発行年月日: 2023年5月25日
    ISBN-10 4880377546
    ISBN-13 9784880377544
    C-CODE C0036
    ページ数 174ページ
    本のサイズ A5

書籍の内容

デジタル化の「落とし穴」に目をつぶってはいけない!

2017年度から21年度までの5年間に、マイナンバー(カード)の紛失・漏洩事案は5万6000件を超えた。最近でも、マイナンバーカードを活用した行政サービスで、システム上のトラブルが相次いでいる。コンビニで他人の証明書が誤交付され、マイナ保険証や公金受取口座で他人の情報がひも付けされるなど、混乱をきわめている。いずれも個人情報が他人に見えてしまう深刻な不具合だ。個人情報の漏洩は人権侵害問題に直結する。また、地域活性化の手段とされる「デジタル田園都市国家構想」はブラックボックスを抱え込んで、市民を置き去りにして、企業中心の事業へと展開する。こうして、地方行政のデジタル化はデジタル集権制の性格を強め、地方自治の基盤を揺るがす危険性に満ちている。

目次

はじめに  岡田知弘

第1章 岸田政権の「新しい資本主義」論と経済安全保障・DX……………………………… 岡田 知弘

はじめに

1 岸田政権の誕生と「新しい資本主義」論 ─ その批判的検証

  • (1)2021年自民党総裁選挙で打ち出した「新しい資本主義」論
  • (2)財界の要望と合致─「新しい資本主義実現会議」の議事録から
  • (3)政府資料にみる「新しい資本主義」のイメージ─従来の「成長戦略」と変わらず
  • (4)“新しさ”を強調せざるを得ない疲弊の広がり
  • (5)“まずは成長”に重点を移す
  • (6)「成長」施策の中身を検証する
  • (7)「分配」の言葉も消える
  • (8)「安保3文書」の大幅改定と経済安全保障中心の「成長戦略」への転換
  • (9)経済安保・DX化・GX化で、地域経済は「活性化」し、住民生活は向上するのか

2 「新しい資本主義」の一環としての経済安全保障政策とは何か

  • (1)安全保障概念の拡張は1970年代から
  • (2)安倍政権下、首相官邸・北村滋国家安全保障局長主導で「経済安保」を推進
  • (3)自民党・新国際経済秩序創造経済戦略本部の提言
  • (4)岸田政権による経済安全保障推進法の制定
  • (5)「岸田軍拡」の中での経済安保「基本方針」の決定
  • (6)順次進む経済安保体制の整備

3 経済安保下のデジタル化の矛盾と問題

  • (1)デジタル技術を活用した経済統制への志向、惨事便乗型政策としての展開
  • (2)従来の自由貿易体制推進との矛盾
  • (3)国内での情報統制強化、思想信条・学問の自由も侵害

おわりに─憲法と地方自治理念との根本的対立

第2章 デジタル田園都市国家構想の概要と問題点…………………………………… 中山 徹

はじめに

1 新しい資本主義とデジタル田園都市国家構想

2 デジタル田園都市国家構想とは

  • (1)デジタル田園都市国家構想の位置づけ
  • (2)地方創生との関係
  • (3)基本方針の特徴

3 地方創生をどう評価すべきか

4 スーパーシティとデジタル田園健康特区

  • (1)スーパーシティの状況
  • (2)デジタル田園健康特区の状況

5 デジタル田園都市国家構想交付金の状況概要

  • (1)デジタル田園都市国家構想推進交付金の概要
  • (2)デジタル実装タイプ(TYPE1)と地方創生テレワークタイプの内容
  • (3)デジタル実装タイプ(TYPE2/3)の内容
  • (4)デジタル田園都市国家構想交付金の概要

6 デジタル田園都市国家構想の目的

  • (1)社会のデジタル化を一気に進めること
  • (2)公共部門を民間企業に開放すること
  • (3)効率化、合理化を進めること

7 デジタル田園都市国家構想がもたらすこと

  • (1)新たな格差の拡大
  • (2)行政と企業の関係が逆転する
  • (3)団体自治の縮小
  • (4)市民の権利が侵害される
  • (5)地方が崩壊する

8 情報技術の発展を地域で活かす前提

  • (1)新自由主義的な政策からの転換と情報技術の活用を一体で進める
  • (2)地方自治の発展が基礎

おわりに

第3章 デジタル社会と自治体………………………… 本多 滝夫

はじめに

1 デジタル社会とは

  • (1)デジタル社会とSociety5.0
  • (2)データ駆動型社会としてのデジタル社会
  • (3)資本主義の転回としてのデジタル社会

2 国・自治体のプラットフォーム化

  • (1)デジタル・ガバメント
  • (2)自治体DXと自治体のプラットフォーム化
  • (3)行政手続のオンライン化と情報システムの標準化・共通化

3 マイナンバーカードの普及促進

  • (1)マイナンバーカードの機能
  • (2)マイナポータルの機能
  • (3)マイナンバーカードの「市民カード」化

4 データ連携基盤の構築

  • (1)デジタル田園都市国家構想
  • (2)データ連携基盤構築の先進事例
  • (3)データ連携基盤の運営主体

5 自治体の個人情報保護制度の見直し

  • (1)個人情報保護制度の見直しの背景
  • (2)個人情報保護条例の見直し─滋賀県の場合─

6 データ駆動型社会の自治体像

おわりに

第4章 デジタル化予算と国家財政、自治体財政………………………………………… 平岡 和久

はじめに

1 政府のデジタル化関連予算を読む

  • (1)政府のデジタル政策とデジタル化関連予算
  • (2)総務省のデジタル基盤改革支援補助金
  • (3)デジタル庁予算

2 自治体・地域社会デジタル化と政府の財政措置

  • (1)行政デジタル化に係る地方財政措置
  • (2)地域社会のデジタル化推進のための地方財政措置
  • (3)自治体デジタル化を推進するための財政誘導・締めつけ

3 自治体のデジタル化関連予算と取組み事例をみる

  • (1)京都府におけるDXの推進と情報システム標準化・共同化
  • (2)京都府長岡京市における情報システムと共同化
  • (3)長野県飯田市におけるDXの推進と情報システム経費
  • (4)長野県上田市におけるDXの推進と情報システム標準化・共同化

4 行政デジタル化と財政の問題点、課題

  • (1)行政デジタル化に関する問題点・課題
  • (2)財政に関わる問題点、課題

おわりに

あとがき
─ 情報技術の活用を市民本位に進める自治体の創造 中山 徹