アグロエコロジーへの転換と自治体─生態系と調和した持続可能な農と食の可能性

書籍の内容

農と食の危機打開にどう向き合うか!

生態系と調和した持続可能な農と食のあり方として、世界中から注目されているアグロエコロジー。この農と食のシステムに関する科学・実践・社会運動の広がりを紹介し、四半世紀ぶりに改正となった日本の「食料・農業・農村基本法」も分析。併せてフランスの有機給食と公共調達、JAの有機農業、各地で展開されているアグロエコロジーの実践事例を紹介し、食の民主主義を展望。

目次

はしがき

第1章 気候危機克服とアグロエコロジーへの転換
ー「生態系といのちの営み」に寄りそう社会を足もとからー

1 はじめに

2 地球温暖化から気候変動、気候危機、地球沸騰化へ

3 「生態系といのちの営み」から社会のあり方を問い直す

  • (1) 「生態系といのちの営み」に向きあう農業
  • (2) 成長の追求と工業的農業がもたらしたもの
  • (3) ウッドショックによって示された「経済的価値」と「使用価値」の矛盾
  • (4) コロナ禍によって明らかになった「使用価値」の大切さ
  • (5) 農業・農山村の多面的機能とその保全に向けて

4 「生態系といのちの営み」に寄りそう社会を足もとから

  • (1) 農業・農村政策の転換を
  • (2) 自治体政策に何が求められているのか
  • (3) 有機給食で地域の農業を支えるー地域自給の拡大と公共調達ー
  • (4) 多様な担い手の連携・協働ーアグロエコロジーへの転換に向けてー

第2章 アグロエコロジーをめぐる国際的潮流
ー国連、市民社会、欧米の動向と日本への示唆ー

1 はじめに

2 アグロエコロジーー定義、歴史、有機農業との比較ー

  • (1) アグロエコロジーの定義
  • (2) アグロエコロジーの歴史的展開
  • (3) アグロエコロジーと有機農業

3 国際舞台におけるアグロエコロジーをめぐる攻防

  • (1) 市民社会からボイコットされたサミット
  • (2) みどりの食料システム戦略ー日本は世界の縮図ー
  • (3) 「代替案」への代替案を求めて
  • (4) 日本農業への示唆

4 欧米におけるアグロエコロジーの取り組み

  • (1) 欧州連合(E)の取り組みー小規模・家族農業によるアグロエコロジーを推進ー
  • (2) フランスの取り組み
  • (3) アメリカもアグロエコロジーに舵

5 おわりにー日本でアグロエコロジーを普及するためにー

用語解説

第3章 食と農の危機打開に向けて
ー新基本法を問うー

1 はじめに

2 食料・農業・農村基本法は何をもたらしたか

  • (1) 旧基本法と新基本法の違い
  • (2) 新基本法制定に対する農民連の主張
  • (3) 農民連の「新基本法への提言」発表の背景
  • (4) 農民連の「新基本法への提言」

3 新基本法の改定案はどこが問題なのか

  • (1) 国民の食料供給の「安全保障」とは全く逆の自己責任論
  • (2) 食料自給率の目標は「向上」をめざすものでも「指針」でもなくなる!
  • (3) 食料の安定供給は、国内の増産ではなく、さらなる輸入の拡大で穴埋め
  • (4) 農民の激減を前提に、農民のいないロボット農業・スマート農業を推進、家族農業は軽視
  • (5) 戦争する国づくりへ、食料有事の措置(第24条)および「食料供給困難事態対策法」
  • (6) 国会への報告義務から逃避し、農業・食料政策の公正性が欠落
  • (7) 価格転嫁・価格保障・所得補償(直接支払)

4 おわりにー新基本法改定に求められるものとアグロエコロジー

第4章 酪農が直面する課題と未来
ー食の民主主義を展望するー

1 はじめに

2 「酪農危機」の諸相とその背景

  • (1)「酪農危機」の多重性
  • (2) コロナ禍を起点とした生乳過剰
  • (3) 資材高騰による所得減少
  • (4) 酪農家戸数の減少と生産減少

3 「酪農危機」から見える課題

  • (1)「自助努力」支援政策の限界
  • (2) 大規模経営の脆弱性
  • (3) 新基本法改定をめぐる問題点

4 酪農政策のアグロエコロジー的転換を

5 おわりにー食の民主主義への道ー

第5章 有機農産物を学校給食に届けよう
ーフランスの公共調達改革ー

1 世界に広がる有機給食

2 「よい食」を学校給食に

  • (1) 「よい食」の概念の変遷
  • (2) 食の公正さを求める運動の展開
  • (3) 公共調達を変革する試み
  • (4) 有機公共調達の実現における課題

3 フランスにおける公共調達の変革ー有機給食を義務化ー

  • (1) Eにおける公共調達のグリーン化
  • (2) 有機農業の推進
  • (3) 有機公共調達の義務化
  • (4) 有機公共調達の取り組みの事例ーサルト県ル・マン市ー

4 日本でも有機給食を広げるために

第6章 アグロエコロジーの実践を地域から
ー島根県の事例をもとにー

1 はじめに

2 長谷川さんによるアグロエコロジーの実践

  • (1) 中山間地域における地域資源の利用のあり方とその消滅
  • (2) 地域資源の循環的利用と長谷川さんの営農
  • (3) 殺虫剤の代わりに生態系の力を利用する
  • (4) 土壌分析からみた長谷川さんの稲作
  • (5) 農業経営としての長谷川さんのアグロエコロジー実践の合理性
  • (6) まとめにかえて

3 地域農業を支える地域密着型第三セクター・吉田ふるさと

  • (1) 吉田ふるさと村の沿革
  • (2) 吉田ふるさと村の事業とその特徴
  • (3) 地域における吉田ふるさと村の役割と意義
  • (4) 吉田ふるさと村の企業理念が示すこと

4 おわりに

コラム 里山でサステナブルな社会づくりの担い手を育む

第7章 JAによる有機農業の取り組み

1 日本の有機農業とJA

2 有機農産物の販売と人材育成を共に進めるJAやさと

3 生協の契約産地から出発したおおや高原有機野菜部

4 BLOF理論に基づく有機農業の普及を図るJA東とくしま

5 JAによる有機農業への取り組みを拡大するために

第8章 北海道酪農のアグロエコロジーへの挑戦

1 はじめに

2 放牧酪農を志向する新規参入者への就農支援ー上川地域・中川町ー

  • (1) 中川町における地域農業の状況
  • (2) 自治体による新規参入の促進
  • (3) 新規参入者の意思を尊重する支援策

3 アニマルウェルフェアをベースとした6次産業化ー十勝地域・清水町ー

  • (1) 清水町における地域農業の状況
  • (2) 「牛は牛らしく、人は人らしく」の酪農経営
  • (3) アニマルウェルフェアと6次産業化

4 おわりに

第9章 中山間地域における有機農業の広がりと農業後継者育成の可能性
ー岐阜県白川町ゆうきハートネットの事例ー

1 白川町というところ

2 有機農業の広がり

  • (1) 第1期 有機農業の芽生えからハートネット結成まで
  • (2) 第2期 ゆうきハートネット結成から確立まで
  • (3) 第3期 新規就農者の受け入れ
  • (4) 第4期 未来を見据えた世代交代

3 今後に向けた課題

あとがき