人間復興の地域経済学

地域とくらしの歴史・理論・政策

    人間復興の地域経済学
    書籍名 人間復興の地域経済学
    著者名等 岡田 知弘, 岩佐 和幸 (編著)
    価格 ¥3,960(税込)
    発行年月日: 2024年12月25日
    ISBN-10 4880377783
    ISBN-13 9784880377780
    C-CODE C0033
    ページ数 448ページ
    本のサイズ A5

書籍の内容

生存と生活の危機を乗り越え、地域から人間らしい生活を蘇らせる道

経済のグローバル化や多発する自然災害を背景に、いま、日本の経済社会は大きな転機を迎えている。地域を土台に人びとのくらしを立て直す「人間復興」という観点から、日本のみならず、中国、米国、フィリピンのさまざまな地域とクロスさせながら地域形成の諸課題を政治経済学の視点から追究する。

目次

序章 「人間の復興」の地域経済学を求めて 岩佐和幸

はじめに

  • 1 グローバル化・構造改革と衰退に向かう日本経済
  • 2 地域経済の構造変化と地域存続の危機
  • 3 本書の分析視角:地域形成、地域内再投資力、地域住民主権
  • 4 本書の構成

第ⅰ部 開発と地域形成の史的展開

第1章 バブル崩壊後の大阪都心部における土地所有と銀行
ー銀行所有地の分析ー 名武なつ紀

  • はじめに
  • 1 バブル崩壊後の銀行と大阪都心部の不動産
  • 2 1990年以降の北船場における銀行所有地の動向
  • 3 銀行支店統廃合の事例分析
  • おわりに

第2章 今日の不動産資本と都市空間形成 豊福裕二

  • はじめに
  • 1 ポストバブル期の土地・不動産市場と不動産資本
  • 2 不動産資本による都市空間形成と地域住民
  • 3 地域住民によるまちづくりの課題

第3章 日本資本主義と漁村開発
ー漁港整備および漁場整備を中心としてー 望月理生

  • はじめに
  • 1 資本主義下の漁村と漁港形成
  • 2 漁業生産力発展の歴史性と生活過程
  • 3 日本における漁業・漁村開発の歴史的展開
  • おわりに

第4章 戦後復興期から高度経済成長期における都市開発の一断面
ー神戸市と姫路市の比較分析をもとにー 林 昌宏

  • はじめに
  • 1 原口忠次郎と神戸市の都市開発
  • 2 石見元秀と姫路市の都市開発
  • おわりに

第5章 地方都市における都市形成過程と公害問題
ー「高知パルプ生コン事件」からみえてくるものー 宇都宮千穂

  • はじめに
  • 1 都市形成と資本蓄積
  • 2 高知市旭町におけるパルプ工場の立地
  • 3 域外製紙資本の蓄積とパルプ工場
  • おわりに

第6章 「見えない」プルートピア
ーリッチランド、オジョルスクから東海村へー 徳永昌弘

  • はじめに
  • 1 プルートピアにおける核の力とリスク
  • 2 呉越同舟のプルートピア
  • 3 「見えない」プルートピア
  • おわりに

第ⅱ部 グローバル化・格差・災害:地域問題の最前線

第7章 日本におけるコロナショックと未完の復興
ー高知県の産業・労働・生活を中心にー 岩佐和幸

  • はじめに
  • 1 中小零細事業者への打撃から破綻リスクの本格化へ
  • 2 労働者の休業・減収と復興への逆風
  • 3 生活困窮者の激増と制度の狭間に立つ人々
  • おわりに

第8章 中国における養蚕業の発展と地域農業の構造変化
ー広西チワン族自治区における養蚕業政策と養蚕農民所得を中心にー 倪 卉

  • はじめに
  • 1 広西チワン族自治区における養蚕業の発展
  • 2 広西養蚕業における空間構造の変化
  • 3 養蚕業の発展と農民所得の変動
  • おわりに

第9章 米国カリフォルニア州におけるアーモンド生産の発展と地域農業の構造変化
ーグローバリゼーションと水資源政策を軸にー 名和洋人

  • はじめに
  • 1 1990年代以降の米国農産物輸出とアーモンドの急成長
  • 2 naftaとカリフォルニア農業の構造変化
  • 3 カリフォルニア州における水資源問題とアーモンド農場の実像
  • おわりに

第10章 フィリピン大都市における移動型生活様式
ーメトロ・マニラにおける路上生活者の事例を中心にー ジョン・ランビーノ

  • はじめに
  • 1 移動型生活様式と調査概要
  • 2 路上生活の背景と移動生活の実態
  • 3 移動型路上生活者の社会経済実態
  • おわりに

第ⅲ部 地域内再投資力論/地域内経済循環論のフロンティア

第11章 取引ネットワーク構造から可視化される地域経済の循環経路 池島祥文

  • はじめに
  • 1 データとネットワークの特徴量
  • 2 地方都市の取引ネットワーク
  • 3 地域経済の結びつきと循環経路の析出
  • おわりに

第12章 大都市と地方都市の相互資金流動の析出
ーマネーフローデータにもとづく都市間分析をもとにー 三輪 仁・池島祥文

  • はじめに
  • 1 市区町村間交易データセットの構築
  • 2 市区町村間交易データセットからみる都市と産業の特性
  • 3 企業取引からみえる地域間関係
  • おわりにー企業活動からみえる都市同士のつながりー

第13章 地域未来牽引企業と地域経済
ー取引構造の分析を中心にー 藤本晴久

  • はじめに
  • 1 地域未来牽引企業と「牽引力」
  • 2 鳥取県の地域未来牽引企業の事例分析
  • おわりに

第14章 地域企業の域内/域外取引と地域経済循環
ー中海・宍道湖・大山圏域の食料品製造業の事例を中心にー 渡邉英俊

  • はじめに
  • 1 中海・宍道湖・大山圏域の概況
  • 2 アンケート調査の結果とヒアリング調査の概要
  • 3 食料品製造業3社の事例
  • おわりに

第15章 地域経済循環の構築における地理的表示制度の可能性と課題
ー愛知県の八丁味噌を事例としてー 関根佳恵

  • はじめに
  • 1 地域経済循環と農業・食品産業
  • 2 日本における地理的表示制度の展開
  • 3 愛知県のgi八丁味噌をめぐる対立と教訓
  • おわりに

第16章 地域経済論に基づく地域金融研究の再構築 金 佑榮

  • はじめにー新たな地域金融研究の必要性と分析視角ー
  • 1 地域金融における階層性
  • 2 総合性を抱えた地域空間に根づく地域金融機関
  • おわりにー新たな地域金融研究への展開ー

第ⅳ部 地域住民主権と自治体政策の新展開

第17章 地域経済のグローバル化と公共調達制度の変容
ー地域・中小企業と公共調達との新たな在り方を探るー 小山大介

  • はじめに
  • 1 地域経済における公共調達の意義
  • 2 国内公共調達制度の再編と地域経済のグローバル化過程
  • 3 中小企業・自治体を中心とした地域視点への取り組み
  • おわりにー地域経済のグローバル化とその対抗軸ー

第18章 中小企業振興基本条例の変遷と傾向の変化
ー条例文の分析を中心にー 大貝健二

  • はじめに
  • 1 中小企業振興基本条例とは何か
  • 2 中小企業振興基本条例の制定状況
  • 3 条例の実態
  • おわりに

第19章 医療経営の現状と地域医療政策
ー新型コロナで浮き彫りになった課題との関わりを中心にー 髙山一夫

  • はじめに
  • 1 厳しさを増す医療機関の経営状況
  • 2 自治体の役割と住民主権の地域医療づくり
  • おわりに

第20章 地域内再投資力と新たな内発的発展 多田憲一郎

  • はじめに
  • 1 「起業の村」を実現した人材誘致の村
  • 2 西粟倉村の地域内再投資戦略
  • 3 地域内再投資力と新たな内発的発展

終章 コロナショックと地域経済学 岡田 知弘

  • はじめに
  • 1 災害の地域経済学の適用可能性
  • 2 地域形成史の反省
  • 3 感染症被害分析における地域経済学的視点の重要性
  • 4 自治体の独自施策の展開と評価
  • おわりにー内部循環型経済のクローズアップと鍛え直しー

あとがき