格差・分断を許さず憲法をいかす国政と地方自治を

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前アメリカ大統領のトランプ氏は「自国第一主義」を唱え、ある意味分かりやすい形で国内外にさまざまな分断を生じさせてきました。一方、日本政府はそうした言葉を発することはせず、さまざまな施策で格差を作ってきました。そして新型コロナ感染拡大に乗じてその格差をさらに広げ、新たな分断を生み出しているのではないでしょうか。

十分な補償や科学的な見地も示されないまま、自己責任による自粛が「強要」されるもと「自粛警察」という言葉まで生まれました。また、持続化給付金を巡っては、担当する自治体の窓口に「あの店は時短営業をしていない」「感染防止対策をしていない」など、住民からの苦情電話が多くありました。

そして今度は特別措置法や感染症法の改正による罰則です。さまざまな理由で、検査や療養に応じられない人や、時短営業などに応じられない店の経営者に対して罰則を科すことが、多くの関係者から反対や懸念する声が上がっているにもかかわらず、国会で強引に可決されました。罰則で検査そのものが回避される可能性が高まるなど感染拡大防止に逆行すると同時に、監視社会による分断が助長されます。

また、誰が監視するのかも問われます。店に時短営業などを要請する自治体(都道府県)の責任で行われ、住民の「監視」による通報も想定されます。また、検査・療養に対しては、今でも多忙を極めている保健所や医療現場が監視・通報などを担わされることにもつながり、まさに自治体とその労働者が住民を監視する役割を担わされることになり、住民間にも新たな分断が生み出されることが懸念されます。

国会で、働く場を奪われた国民への政治の責任を問われた菅義偉首相が、雇用を守る施策を示すことなく「最終的には生活保護がある」と答弁したことに対して、多くの非難の声があがっています。しかし生活保護は「最終」ではありません。憲法25条に基づく最低限の生活を保障しながら、現場のケースワーカーは住民に寄り添い、利用者を取り巻くさまざまな環境を把握・考慮して自立できるように、懸命に努力をしています。また国会質疑において「生活保護に陥らないように」「最終」や「陥る」といった言葉で生活保護が「最終手段」であるかのような誤った印象を与えています。そのため、現行制度のもとでも、本来権利であるはずの生活保護申請がためらわれているのに、さらに生活保護利用者に対する偏見を助長し、それが国民間の分断も生んでいるのではないでしょうか。

自治体・自治体労働者の役割を、公務サービスの提供から住民の監視に変質させることや、国民の間に分断を生み出すことで、まさに旧憲法のもとで進められた、戦争をする道に向かっているといっても過言ではありません。

コロナ危機に便乗して政府はデジタル化を強行に進めようとしています。国民の命と暮らしを守りきれる社会を実現できる政治にしなければなりません。同時に、コロナにおける「罰則」を住民の命や暮らしを守るべき自治体側である全国知事会が要請したことも、見逃してはいけないと思います。改めて、憲法を守りいかす自治体首長を、全国で誕生させることも重要だと実感しました。

桜井 眞吾

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