「非正規」という響きに違和感があります。「正規でない」労働者を意味しますが、その働き方は「正規」そのものです。日本の労働者は約5669万人。そのうち約2165万人が非正規雇用で全体の38.3%にあたります(2019年)。10年前は33.7%、20年前は27.7%、30年前は18%でした。
自治体職場はどうでしょうか。いわゆる「任期の定めのない常勤職員」(正規職員)は約276万人。警察や消防、教育部門、公営企業等会計部門を除いた都道府県や市町村の一般行政部門は約93万人です。一方、会計年度任用職員は約62万人、臨時的任用が約6.8万人、特別職非常勤職員は約0.4万人(2020年4月)です。
臨時・非常勤職員のうち76.6%が市区町村等で働いています。「期末手当」が支給できるとして、鳴り物入りで制度化された会計年度任用職員ですが、退職手当もないパートタイムが88.8%を占め、フルタイムはわずか11.2%に過ぎません。
臨時・非常勤職員と一般行政部門の正規職員の比率は、43対57です。自治体職員の4割以上が「非正規」職員ですから、もはや「補助的業務」などとはいえず、職員の半数以上が「非正規」職員の自治体も珍しくありません。
地方自治法の第1条の2は「住民の福祉の増進を図ることを基本と」するとうたっています。その仕事は「任期の定めのない常勤職員」(正規職員)が行うことを基本としています。しかし、全国の自治体は、国策である地方「行革」による人件費削減のため、脱法的に臨時・非常勤職員を増やし低賃金で住民サービスに従事させ、正規職員から臨時・非常勤職員への置き換えを進めてきました。
こうした中で、昨年4月に施行された「会計年度任用職員」制度は、財政用語を労働者の名前に使うという冷たいネーミング。一体誰が考えたのか知りませんが、その感覚を疑います。新制度はその名が表すとおり、臨時・非常勤職員の切実な願いに応えるものではありませんでした。
依然として雇用不安は消えず、突然「一般職」だといわれ、「人事評価」の対象にされました。長い間フルタイムで働いてきた仕事なのに、人件費を減らすために勤務時間を無理やり減らされました。ほんのわずかな「期末手当」を支給するために、少ない月々の給料をさらに減らされました。いくら専門的な資格や豊富な経験があっても、何年働いてきても賃金や手当には反映されません。
ある市の交渉で「長年働いてきました。少しでも給料はあげて欲しい。でもお金じゃありません。私はこの市で働くことに誇りをもっています」と非正規の保育士が心情を訴えました。別の市の交渉では、「夏の調理場は60度を超える暑さです。正規の調理員も、非正規の調理員も暑さは同じです」と非正規の調理員が声をあげました。「正規」と「非正規」で夏休みの日数が違う。身内を亡くした悲しみは同じなのに、忌引き休暇の日数が違う。1年経てば雇用条件はまた一からスタート。各自治体当局は、住民のくらしを守るために働く臨時・非常勤職員に「敬意」を払い、安心して仕事に専念できる労働条件を整えることが必要です。公務労働に「正規」も「非正規」もないのです。