特別区(=東京23区)の人口は約970万人、最も人口の多い区は世田谷区で、90万人を超えますが、これは7つの県・7つの政令市の人口を上回ります。人口が極めて高度に集中した大都市地域として、行政の一体性と統一性を確保するための制度として、都区制度が地方自治法に規定されています。一つの自治体では統治できない人口規模のため、東京都と23区の計24の自治体が一体性と統一性に配慮しながら行政運営を行う大都市制度です。
市町村事務である消防・水道は、23区域では法令に基づいて都が担っていますが、保健所は全区に設置され、今年度末時点で7区に児童相談所が開設されるなど一般の市を上回る行政事務が展開されています。特別区は都の内部団体とされていましたが、2000年の都区制度改革(地方自治法改正)において、基礎的な地方公共団体に位置付けられ、内部団体性を払拭する制度改革が行われました。都区の役割分担の原則も見直され、都が行う市町村事務を限定し、特別区は住民に身近な行政を都に優先して行うこととされました。
都区の財源配分の原則も確認され、市町村財源の配分割合については、都区の市町村事務の分担割合に応じて、定めるとするなど、特別区の財政自主権の強化も位置付けられました。23区域での大都市事務の一部を都が担っていること、また、税源が都心区に集中することに伴って、区間の財政バランスの調整も必要となるため、一部の市町村税等を都が徴収し、都区間・区区間で再配分する都区財政調整制度が存在します。23区内で生み出される市町村財源の6割、約2.2兆円を都が徴収して再配分するものですが、特別区への配分は約1兆円に過ぎず、都は他の道府県は手にできない約1.2兆円もの市町村財源を得ています。また、都区財政調整による特別区への交付金は、各区が徴収する特別区税収入に匹敵する規模となり、半数の区では税収よりも交付金が多い現状にあります。
このあまりにも大きな財源の取り扱いが、都区間の協議に委ねられているという区民不在の驚くべき仕組みとなっています。交付金算定にあたって、各区の収入と需要額について都区間で細目まで協議されますが、都の需要額を協議する場はないため、1.2兆円が何の事務に使われているかはわかりません。都区の市町村事務の分担割合に応じて市町村財源の配分割合を決定するという法の趣旨に反する現状にあり、特別区の行政運営の細目にまで都が介入する仕組みとなっています。
法改正から22年が経っても、法の趣旨にかなった対応に至らず、いまだに「都の内部団体」的な取り扱いが続く不平等極まりない状態にあります。住民に身近な行政を担う特別区が十分な財源を得られないことも、都の介入・干渉で自治体にふさわしい独自の事業展開をできないことも極めて問題です。
特別法に基づく特別区制度が創設され、大阪では住民投票が実施されましたが、あたかも大都市における自治権拡充のような主張もされていました。都区制度改革を未完成のままに放置しておくことは、特別区制度と地方自治の民主的な発展を阻害するものです。
今年度は都区間の財源配分の見直しを協議することとされており、協議開始の時期に本稿を執筆しており、本誌発売の頃に協議結果が出ますが、その内容を注目しています。