高度成長の時に交通インフラの整備で人口が増加した静岡県の人口減少問題、特に近年急速に進む人口社会減(人口の転出超過)の問題は、首長選挙の争点になるほど県民の関心を集めています。
総務省の「住民基本台帳人口移動報告」(外国人含む)によると、コロナの影響が沈静化してきた2022年の静岡県は転出者が転入者を上回る「転出超過」が4658人となり、2021年から680人増えました。東京圏だけを見ると5059人の転出超過。前年から1231人増えました。
さらに日本国籍者に限ると6038人の転出超過になって福島県、広島県に次ぐワースト3位となり、外国人を除く日本人のみで数えれば常に人口流出県のトップクラスです。
年代別では25~29歳の転出超過が前年よりも556人増え、全国で最も多い転出超過でした。2022年の日本人の転出者は5万4849人。うち10~39歳は3万8561人で全体の7割を占めます。しかもその中でも女性の流出が顕著であるという特徴があります。
ここまでのことをまとめれば、日本国籍を持つ若者が首都圏へ、特に大学、短大、専門学校へ進学してそのまま首都圏に残ってしまう、あるいは一度戻ってきたとしても新たな仕事を求めて首都圏へ流出していくということだと思います。そして単純に雇用がないのではなくマッチングできていない、そしてその流出分を外国人労働者が代替しているのではないかと思われます。
これまで静岡県労働組合評議会は、静岡県の賃金をはじめ雇用の問題が首都圏、中京圏に比べて劣っており、それが流出の原因として、最低賃金(最賃)の低水準を例に挙げて全国一律最賃制度の実現をめざす最賃闘争の柱としてきました。
これは静岡県が実施する「県民意識調査(2019年)」でも裏付けられています。転出超過の理由の上位3位は「やりたい仕事がないから44.3%」「希望する給与水準の仕事が少ないから41.3%」「東京圏や名古屋圏の方が収入を得られるから38.1%」となり雇用・賃金が流出要因であることがわかります。
昨年、上智大学の三浦まり教授などの都道府県別のジェンダーギャップ指数が発表され、 そこから言えるのはジェンダーギャップで若い女性が流出している様が見て取れます。
この指数によれば、静岡県のジェンダーギャップは政治、行政などは全国で中位ですが、経済は下から3番目の45位。たとえば東京と比較すると、フルタイムの仕事に従事する割合の男女比は静岡0.601・東京0.701、企業や法人の役員・管理職の男女比は静岡0.159・東京0.215、共働き家庭の家事・育児等に使用する時間の男女格差は静岡0.119・東京0.187となります。
就活でターンして戻ってきた女性にとって静岡の雇用は正規が少なく非正規ばかり、たとえ就職しても賃金は少なく、責任ある仕事をさせてもらえず、家庭では家事育児が女性に重い負担としてのしかかります。
こうした視点で人口社会減対策が論じられることは全体としては少ないと思います。自治体としても雇用・賃金を改善する政策の確立が必要ではないでしょうか。非正規の労働条件の改善など市役所がパイロット的に改善していくことは、全市に浸透する意味で効果は大きいその中でジェンダー問題の視点がますます必要ではないでしょうか。